目次
CUT 1|空

阿蘇の空は、
最初から、すべてを映そうとしない。
高すぎる青。
視界の端まで続く余白。
見上げた瞬間、
言葉は置いていかれる。
CUT 2|草原

熊本県阿蘇市。
阿蘇五岳の麓に広がる、草千里ヶ浜。
火山がつくった大地は、
いまは穏やかな起伏だけを残し、
静かに横たわっている。
風が吹くたび、
草が揺れ、
音にならないリズムが生まれる。
CUT 3|足元

乾いた土を踏む音。
一歩、また一歩。
急ぐ理由は、ここにはない。
草千里では、
立ち止まることに、説明がいらない。
CUT 4|人物・ロング

広角で切り取ると、
人は驚くほど小さい。
空が大きく、
草原が広すぎるからだ。
でも、その小ささは、
孤独ではない。
この風景の中では、
人もまた、風景の一部になる。
CUT 5|風

風は冷たく、
やさしい。
マフラーが揺れ、
袖口から空気が入り込む。
冬の終わりか、
春の入口か。
季節は、まだ決めかねている。
CUT 6|人物・ミドル

歩く。
振り返る。
少し笑う。
何かを表現しようとしなくても、
ここでは、それで足りる。
草千里は、
感情を引き出さない。
ただ、
そのままを、受け取る。
CUT 7|人物・アップ

距離を縮めると、
表情が浮かび上がる。
風を受けた頬。
光を含んだ目。
大きな風景に囲まれているからこそ、
人の輪郭は、静かにやわらぐ。
CUT 8|空・逆光

逆光の空は、
色を増やさない。
青は深く、
影は長い。
時間が、
少しだけ伸びる。
CUT 9|静止

草千里ヶ浜は、
写真を撮らなくても成立する場所だ。
歩いて、
止まって、
空を見る。
それだけで、
十分に満たされる。
写真は、
この時間を思い出すための、
予告編のようなもの。
CUT 10|余韻

何かを得たわけではない。
答えが見つかったわけでもない。
ただ、
肩の力が抜けた。
心がほどける、というのは、
きっと、
こういう感覚だ。
FADE OUT|風景

写真を見返すたび、
あの空の高さと、
風の冷たさが、戻ってくる。
そしてまた、
理由もなく、
阿蘇へ向かいたくなる。